前回 「第5章 老化を治療する薬(前半)」からの続きとなります。
今回も、
第5章 老化を治療する薬
からです。
老化の治療薬として有望な薬の紹介の続きです。
3.レスベラトロール(サーチュインを活性化させる化学物質の発見)
・レスベラトロールとカロリー制限では同じメカニズムが使われていたことになる。つまり、どちらもSir2酵素を活性化するかたちで作用しているのだ。・ストレスにさらされているものほどレスベラトロールを多量に生成する。
・レスベラトロールに限らず、健康増進に役立つ様々な分子とその誘導体も、やはりストレスを受けた植物によって大量につくられる。
・これが正しいとすれば、自然界から新薬を見つけたいときには、ストレスのたまった生物を探せばいいことになる。
・ストレス下にある植物では、人間のサバイバル回路の働かせる助けになりそうなゼノホルミシス的な分子の濃度が高いのだ。色のとくに濃いものを探すといい。ゼノホルミシス的な分子は黄色、赤色、オレンジ色、青色であることが多い。そういう食物は味も良い傾向にある。
・ヒトの培養細胞にレスベラトロールを加えると、細胞のDNAが損傷しにくくなった。
・(マウスの実験から)レスベラトロールが数十種類の病気(種々のがん、心臓病、脳卒中、心臓発作、神経変性、炎症性疾患、創傷治癒など)に対して予防効果を発揮するほか、マウスの健康と回復力を全般的に高める。
・レスベラトロールを間欠的断食と組み合わせると、断食のみでは達成できない長さまで平均寿命と最大寿命を共に延ばせることを発見した。
このレスベラトロールはポリフェノールの一種で、ぶどうの果皮などに含まれているようです。生活習慣病にも効果があると言われいる一方で、食品中の中にある量であれば、健康被害はないようですが、サプリメントなどで大量に摂取することで、腹痛や下痢になることもあるようです。取扱に注意が必要ですね。
4.NAD(サーチュインの燃料)
・サーチュインは化学物質で活性化できる。
・NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、7種類あるサーチュインすべての活動を高めてくれる。
・NADはナイアシン(ビタミンB3)から生成させる。これがひどく欠乏すると、皮膚炎、下痢、認知症、皮膚のただれなどが生じ、放置すれば死に至る。
・NADは体内で500種あまりの酵素に利用されているため、NADがなければ私たちは30秒と生きていられない。
・数々の重要な生体プロセスを調節するうえで鍵を握る物質だった。そのプロセスには、老化や病気も含まれる。
・NADがサーチュインの燃料になることを今井眞一郎とレニー・ガレンティが突き止めた。
・十分な量のNADが存在しなければ、サーチュインはうまく仕事ができない。
・NAD濃度が年齢とともに低下することもわかった。
このNADはほとんどの生物にある古典的な酵素でありながらも、最近この研究がかなり進んできているようでうす。次のNMNと合わせて老化治療の研究が進むといいでですね。
→※老化関連疾患におけるNAD+合成系の役割と創薬標的としての可能性
そして、最後はこのNADを増加させる増強分子NRとNMNです。
5.NADを増加させるNRとNMN
・NR(ニコチンアミドリボシド)は、きわめて重要なNADの前駆体(生化学反応において特定の生成物の前の段階にある一連の物質)の一つ。
・NRがNADを増加させ、結果的にSir2酵素の活動を高めることで、酵母細胞の寿命を延ばせることを見出した。
・NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)も前駆体の一つ。
・(NMNは)人間の細胞内でもつくられているし、アボカド、ブロッコリー、キャベツなどの食物にも含まれている。体内では、NRがまずNMNに変換され、次にそれがNADに変わる。
・NRかNMNを入れた飲み物を動物に与えると、体内のNAD濃度はそれから2~3時間で約25%上昇する。まるで、それまで絶食か相当な運動をしていたかのような上がり方だ。
・NMNはNRより安定している。
・NMNについては試験を進めている最中なので、決定的な答えは出ていない。
・最新の研究からは、NAD増強分子が人間に対しても似たような健康効果を(マウスとまったく同じでないにせよ)もたらすことができると強く示唆されている。
まだ、決定的な答えは出ていないようですが、このNMNはシンクレア先生もサプリメントとして毎日服用しているので、個人的にはかなり期待しています。ただ、NMNは原料が高いようなので、サプリメントの販売価格もけっこう高めなんですよね。毎日服用するサプリとしては、割高かもしれません。
まとめ:
・NAD増強分子(メトホルミンやラパマイシンも含む)が適度なストレスをつくり出すことで、長寿遺伝子が働いてエピゲノムの変化を抑制し、若々しくいられるプログラムを維持する。おかげで、老化の原因となる「雑音」の蓄積が減り、プログラムが回復する。
・原理はわかっているものの、エピゲノムの雑音が分子レベルでどのように抑えられているのかについてはまだ解明の途上だ。
・この方面で有望なNAD増強分子はけっしてNMNだけではないということだ。
・どの分子を、いつ、どういう人が服用するのが一番いいのか、見きわめるにはまだ少し時間がかかるだろう。それでも、私たちは日々その答えに近づいている。わずか数錠の薬を飲むだけで、健康寿命が大幅に延びる時代は間違いなく来る。
まだまだ研究途上ということですが、そういう時代が近いうちにくることを願います!
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次回から第6章、
若く健康な未来への躍進
です。