前回 「第5章 老化を治療する薬(後半)」からの続きとなります。
今回は、
第6章 若く健康な未来への躍進
からです。
この章では、今後実現できそうな老化の治療法について4つほど挙げられています。おおまかに言うと、
1.老化細胞(ゾンビ細胞)を除去する
2.ジャンクDNAを封じ込める
3.免疫系を使うワクチンの接種
4.細胞の若返りプログラム
この4つの方法です。
では、本書にそって一つひとつみていきましょう。
1.老化細胞(ゾンビ細胞)を除去する
老化細胞(ゾンビ細胞)とは、細胞分裂で増えることを永久にやめてしまった細胞のことで、さらに無くなることもなくずっといすわり続ける細胞のことです。
細胞分裂はテロメアの長さによって回数が40~60回ほど決まっているようですが、それを伸ばすことが可能であるといいます。
テロメラーゼという酵素があればテロメアを伸ばすことができるのだが、細胞ががん化するのを防ぐために、幹細胞以外ではこの酵素のスイッチが切られている。1997年、驚くべき事実が明らかになった。培養した皮膚細胞にテロメラーゼを注入すると、細胞が老化しないのである。
このテロメラーゼを使えばテロメアを伸ばせるけど、このスイッチが入っていると細胞ががん化する可能性もあるので難しいようです。
このまま老化細胞を放置しておくと、以下のような危険もあります。
・数が少なくても広い範囲にダメージを及ぼしかねない。
・サイトカイン(タンパク質)を放出して続けて免疫細胞のマクロファージを呼び寄せて組織を攻撃させる。その結果炎症を引き起こす。
・サイトカインは他の細胞までをもゾンビ化させる。さらに周囲の細胞を刺激してがん化させるおそれもある。
では、どうすればよいのか?
老化細胞を若返らせるのは難しいため、死滅させるよりほかに手がない。そのために現在開発が進められているのが、セノリティクスと呼ばれる老化細胞除去薬だ。これを用いると、私たちは短期間で若さを取り戻せる可能性がある。老化細胞だけを死滅させるように設計されている。
人間を対象にしたセノリティクスの初の臨床試験は2018年に始まった。変形性関節症と緑内障に効果があるかどうかを検証するのが狙いである。
臨床が始まっているので、比較的はやく実用化できるかもしれませんね。
2.ジャンクDNAを封じ込める
ヒトゲノムの約半分を占めている可動性のDNA配列を「レトロトランスポゾン」といいます。これもまた初耳です(;^_^A この領域は「ジャンクDNA」を呼ばれているようです。
若い細胞であれば、クロマチン構造がしっかりしている。だから、レトロトランスポゾンを封じ込めて、ゲノムから飛び出してDNAを壊さないように、そして別の場所に入り込まないように防いでいる。
若いときは、このジャンクDNAがふらつかないようにしっかり閉じ込めているようですが、ゲノムが不安定になると、これが動きだして、エピゲノムに雑音が起こり、炎症を引き起こすようです。
将来的には、動き回るDNAを大人しくさせておくために、安全な抗レトロウイルス剤やNAD増強分子が使われるようになる見込みもある。
これに関しては、まだぜんぜん進んでいないようです。
3.免疫系を使うワクチンの接種
最近、新型コロナのワクチンの接種がはじまりました。インフルエンザのワクチンはボクも接種しましたが、コロナワクチンはいつになるのやら。。。。
同じように、老化にも予防接種のような感じでワクチンを接種することが挙げられています。
ジュディス・キャンピージとマヌエル・セラーノによると、
老化細胞はがん細胞と同じように、「ここにゾンビ細胞はいませんよ」という小さなタンパク質の標識を掲げている。それによって、免疫系に認識されないようにしているという。その標識を取り除いて、老化細胞を破壊する許可を免疫系に与えることができずはずだ。今から数十年先には、赤ん坊に各種ワクチンを打つだけでなく、中年を迎えたときに老化細胞の予防注射をするのが普通になるかもしれない。
最後は、
4.細胞の若返りプログラム
です。
老化細胞する前に、細胞そのものをリセットするやり方ですね。しかもその細胞の特有性を失うことなく。
老化を克服する解決策には「細胞のリプログラミング」というやり方もあるのだ。老いたDNAであっても、再び若くなるための情報を保持している
山中伸弥は、4つの遺伝子が成熟細胞を「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」に変えることを発見したという。iPS細胞は未成熟な細胞であり、誘導すればどんな種類の細胞にも変身できる。
細胞を若返らせることが培養皿の中でできるのを示したわけだ。ありとあらゆる血液細胞や、臓器や組織を移植用に培養できるようになる。老化の家庭でアイデンティティを失った細胞は元の姿を回復する。これこそがDVDの研磨剤だ。
細胞のリプログラミングは山中先生のiPS細胞がかなり有望のようですね!
ただ、まだまだこれも研究の途上にあるようなので、次のようにも言われてます。
山中因子を用いる処置は有害性が非常に高い。この技術がまだ実用化の段階にないのは間違いない。少なくとも今はまだ。しかし、ゴールは着実に近づいている。
近い未来にこの技術が使える日がくることを期待しつつ今回はここまでとします。
---
次回は第7章、
医療におけるイノベーション
です。