前回 「第7章 医療におけるイノベーション」からの続きとなります。
今回は、
第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
第8章 未来の世界はこうなる
からです。
この章では、超長寿社会が到来たとき、どんな社会になっているのかを模索します。
第4章~第7章まで内容でも紹介されていた方法で健康寿命がどこまで延びるのか試算すると、以下のようになります。
1.DNAをモニターすることで病気が顕在化する前に対処(+10年)
2.間欠断食などのいますぐできること(+5年)
3.サバイバル回路を活性化し、長寿遺伝子を働かせる分子(薬)の摂取(+8年)
4.遺伝子改変を通して、自分のエピゲノムをリセット等の医療革新(+10年)
この1~4を合わせると合計で33年となります。
先進国の平均寿命が80歳だとすると、80+33で113歳。これが未来の平均寿命だ。
平均寿命が113歳って驚きです。しかも、これは控えめに見積もってこの数字なのです。
平均寿命が113歳となる社会のイメージが想像しにくいですよね。どうしても、今の延長線上で考えてしいまいます。
■科学技術は想像を超える速さで進歩する
近づきつつある未来が見えていないケースのほうが実際には圧倒的に多い。私たちは現在の延長線上で物事を推測する。しかし、世の中はそうやって直線的に進んでいくとは限らない。
来るべき革新をいち早く知る立場にある者として、これだけははっきりといっておく。私たちが生きているあいだに、世界で初めて150歳の声を聞く人が現れても少しもおかしくはないのだと。細胞のリプログラミングが真価を発揮すれば、今世紀末までに150歳は手の届く年齢になっている可能性があるのだ。
「老化の情報理論」が正しければ、上限などないのだ。エピゲノムを永遠にリセットし続けることも夢ではない。
こうなると、聞いたこともないような寿命年齢が実現する長寿社会に対していろいろと不安も出てきます。この章では以下のような代表的な懸念とされることが挙げられています。
・人口増加問題(減るよりも増えることの問題)
・大量消費、大量廃棄という問題
・100年辞めない政治家が牛耳る世界
・高齢者が増大することで社会保障が成立しなくなる
・長寿の人はますます金持ちになり、格差がかつてないほど広がる
これらの懸念に対して、デビッド・シンクレア先生はポジティブな未来を見られているようです。
■人類は限界を超えることができる――地球で生きていける人口に上限などない
環境科学者アール・C・エリス
「地球が抱えきれる人数に上限があるとすれば、それは私たちの社会制度や科学技術の能力の限界から生じるのであって、環境の制約によるものではない」
人類が発展を遂げることができたのは、自然の恵みに頼るだけでなく、技術を通して自然に適応する能力も組み合わせてきたからにほかならない。
人類はこれまでも、そしてこれからも、科学や技術の力を使いながら自然からの課題に挑み乗り越え、適応していくという考えですね。
また、人口増加の懸念についていは、次にように言われています。
世界の平均人口増加率は、1970年頃には年間2%だったのに対し、最近では約1%にまで落ち込んでいる。2100年の時点ではそれが0.1%になると予想する研究者もいる。この傾向を受けて国連の人口統計学者は、世界人口が2100年までに110億人に達してから横ばいになり、以後は減少に転じると予測している。
寿命が延びるという変化が起きる一方で、数十年前から出生率の低下が続いている。差し引きすれば、人口が増え続けるにしてもペースは遅く、過去100年のあいだに経験したような爆発的な増加にはけっしてならないと考えられる。
さらに、人口がかなり増加したにも関わらず、100年前と比べて、私たちの暮らしは実際のところ良くなっているという現実があるわけです。
そのうえで、超長寿社会の高齢者はどうあればいいのか?
シンクレア先生は次のように指摘します。
■高齢者の能力は非常に高い
現代の教養ある高齢者は、65歳より若い世代と同じくらいテクノロジーを使いこなしている。忘れてはいけない。彼らの世代が月にロケットを送り、超音速旅客機やパソコンを発明したのだ。
思考力を要するほとんどの課題と、文章作成、語彙、リーダーシップの面で、彼らの能力は若者を大きく引き離している。
まず、高齢者は経験値が高く、ハード的な能力よりもソフト的な能力が高いと言えるので、そんな高齢者の活躍する場をもっと開くべきだと言われています。
男女を問わず高齢者の労働参加が増えることは、社会保障制度の破綻という懸念を解消する特効薬になるかもしれない。制度を維持するための答えは、人々を無理やり長く働かせることではなく、働きたい者が働くのを許すことである。
人が80年でも90年でも、あるいは100年でも働き続けることを選ぶようになれば、経済のあり方は根本から変わるだろう。
また、老化を遅らせることによる経済効果についても言及されています。
老化を遅らせ、さらには若返りすら図れるようになれば、病気の重荷が全体として軽くなるのである。結果として医療システムは大幅に向上するだろう。かつては数十万ドルもかかっていたような治療法はすたれ、錠剤を飲むだけで対処できるようになる。しかもその薬も、いずれはわずかなコストで製造されるようになる。人生の最後の日々は自宅で家族と共に過ごせる。
このようにシンクレア先生は、超長寿社会の到来を明るくみているようですね。たしかに、年金などの社会保障問題の解決につながりそうな要素ではありますよね。現役世代の幅がもっともっと伸びるわけですから。
今の社会の仕組みが今の寿命をベースに組み立てられているので、超長寿社会が到来したら、社会の仕組みもかなり変わっていきそうです。
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次回は、最終章である第9章、
私たちが築くべき未来
からです。