投稿日:2021年6月28日
この本のタイトルはかなりインパクトがある。だから、タイトルと表紙のイメージで買ってしまった。
450ページ近くあるなかなかボリューミーな本で、けっこう内容が濃い。読むのに時間がかかってしまった。
「2030年」の世界はどんな風になっているのだろうか?そんなことを思いながら読んだ。あと9年もすれば2030年だ。東日本大震災から10年。それから今に至るまで、あっという間であったから、2030年も同じようにあっという間にやってくるのだろう。
そんな2030年に向けて、すべてのことが「加速」するという。そんな加速する世界に備えてね、と。
ただ、 原題は「The Future is Faster than You Think」とあり、2030年にフォーカスしたタイトルではない。「未来は思っているよりもより速くすすむよ」とあるようにぼんやりしている。原題から、この本は「2030年がどうなっているか?」ということが趣旨ではない。
ということで、すっかり「2030年」というタイトルに釣られてしまった。
この本の著者であるピーター・ディアマンティスは長寿・医療分野の起業家であり、スティーブン・コトラーも、ジャーナリストでありつつも起業したり、フロー状態の専門家でもある。
両者とも、各分野での最新テクノロジーを身近に感じつつ、その最先端具合が加速度的に変化していくのを肌で感じ、各テクノロジーが融合しつつあることで指数関数的な速さで世の中が変わっていくということを、この本で紹介している。
こんな人におススメ
・10年後、20年後の未来がどう予測されているのかを知りたい人
・今の急成長しているテクノロジーにはどのようなものがあるのかを知りたい人
・「空飛ぶ車」が実現するのかどうかを知りたい人
ざっくり要約
進化するテクノロジー(たとえば人工知能、AI)が、同じく進化する別のテクノロジー(たとえば拡張現実、AR)と合わさったとき、何が起こるのか。もちろんAIもARもそれぞれが強力なテクノロジーだ。だが今、小売り、広告、娯楽、教育をはじめ多くの産業に破壊的変化が起きていて、しかもこれからさらに大きな変化が起ころうとしているのは、両者の「コンバージェンス(融合)」の結果である。
様々な分野の最新のテクノロジーが、エクスポネンシャル(指数関数的)に加速し、さらにそれぞれのテクノロジーが絡み合い融合すると、破壊的な変化を引き起こすという。しかも、この変化は10年ほどで起こってしまうかもしれない変化というのだ。
この本では3部構成でつづられていて、どの分野のテクノロジーが急成長しているのか(1部)、それがどの産業に変化を起こすのか(2部)、さらに未来のグローバル化はどすすんでいくのか(3部)についての未来像が描かれている。
1部:現在エクスポネンシャルな成長曲線をたどっている9つのテクノロジーについて、現在どのような状態にあり、どこへ向かうのかを見ていく。
9つのテクノロジーと書いてあるのだが、どのようなくくりで9つなのだろうか。10はあるような気が・・・。
・量子コンピューター
・人工知能(AI)
・ネットワーク
・センサー
・ロボティクス
・仮想現実(VR)と拡張現実(VR)
・3Dプリンティング
・ブロックチェーン
・「材料科学」とナノテクノロジー
・バイオテクノロジー
2部:8つの産業に注目し、テクノロジーのコンバージェンスがどのように世界のあり方を変えているかを見ていく。未来の青写真を提示する。社会に起ころうとしている主要な変化を明らかにし、この波に乗るためのノウハウを提供する。
1.買い物の未来
2.広告の未来
3.エンターテイメントの未来
4.教育の未来
5.医療の未来
6.寿命延長の未来
7.保険・金融・不動産の未来
8.食料の未来
3部:人類の進歩をおびやかす気候変動、経済、生存にかかわるリスクを見ていく。続いて10年先ではなく100年先を視野に入れ、5つの大移動に注目する。
1.経済的理由による移住
2.気候変動による混乱
3.バーチャル世界の探求
4.宇宙の植民地化
5.ハイブマインド(集合意識)
終わりに
エクスポネンシャル同士が融合すると、製品、サービス、市場だけでなく、それらを支える構造そのものが消滅する。
これまで普通にあったものが、いつの間にかまわりからなくなっていたり、ぜんぜん使わなくなっているものがある。レコードやCDやMD、レンタルビデオなどがそれだ。ジワリじわりと変化していたが、気づいたらiPhoneで音楽を聴き、映画やドラマをみたりしている。
それを可能にしたのは、コンピューターの性能の向上とダウンサイジング、ネットワーク性能の全体的な向上があったからだ。テクノロジーが融合すると、既存の分野にとってはまさに破壊的ともいえる。
これの破壊的なテクノロジーの融合と加速が、他の分野でも起きてくるとなると、人間そのものがテクノロジーについていけなくなりそうだ。
人間の脳は、ローカル(地域的)でリニア(直線的)な環境で進化してきた。ローカルとは、あらゆることは1日あれば歩いていける範囲で起きていたということ、そしてリニアとは変化の速度がきわめて遅かったという意味だ。
それにもかかわらずわれわれの脳はハードウエアとして20万年ほどアップデートされておらず、これほどのスケールやスピードには適応できない。
テクノロジーが体感的・直感的に理解できないことが増えてくると、ヒトはどう変化するのだろう。ハラリ先生が言う、「ホモ・サピエンス」から「ホモ・デウス」へと進化せざるを得なくなるのだろうか。
このテクノロジーのエクスポネンシャル的な加速と、コンバージェンス(融合)は、ある種のグローバル化を進め、カタチや見た目をかえた帝国主義となっていくのかもしれない、と思った。
『2030年』の目次
はじめに
第1部「コンバージェンス(融合)」の破壊力
第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
第2章 エクスポネンシャル・テクノロジー Part 1
第3章 エクスポネンシャル・テクノロジー Part 2
第4章 加速が“加速"する
第2部 すべてが生まれ変わる
第5章 買い物の未来
第6章 広告の未来
第7章 エンターテインメントの未来
第8章 教育の未来
第9章 医療の未来
第10章 寿命延長の未来
第11章 保険・金融・不動産の未来
第12章 食料の未来
第3部 加速する未来
第13章 脅威と解決策
第14章 5つの大移動がはじまる
おわりに
謝辞
解説