思ったことを「メモ」にとっておく

主に読んだ本の備忘録として「本の抜き書き」と「思ったこと」を書きつづり、さらに本以外のことでも「メモしたこと」、「考えたこと」についてつづっているブログ

21世紀の新しい行動原理 @ 『モチベーション3.0』


スポンサードリンク

 
 ダニエル・ピンクの最新の著『DRiVE』を何度かにわたって当ブログでは紹介してきました。その日本語版を大前研一氏の翻訳で『モチベーション3.0』というタイトルで7/6に出版されます。講談社の青木さま、Rプラスさま、献本ありがとうございました。
 
『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク著、大前研一

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

 
 この本は、タイトルにモチベーションという言葉があるからといって、単に「やる気を出すための方法」とか、「頑張るための方法」について書かれた内容ではありません。もちろん、それも大事なことではあるのですが、それはこの本で言われていることの本質ではないと思います。21世紀の人間の行動原理の本質に迫る内容が書かれています。
 
「人はなぜそれをやるのか?」
 
 人が何らかの行動をするには理由があります。それはある原理によって説明ができるのです。ダニエル・ピンクは人間の駆動(DRiVE)原理であるモチベーションを3種類に分けてそれを解き明かします。それは次の通り。
  

モチベーション1.0:種の保存・生存本能に基づく行動原理
モチベーション2.0:外発的動機に基づいた報酬と罰による行動原理
モチベーション3.0:内発的動機に基づいた人生の意義による行動原理

 
  
■「モチベーション2.0」の20世紀
 19〜20世紀は「モチベーション2.0」によってのみ行動の効果があるとして、答えが用意されている○×式の教育が施されている。また、報酬や罰によって主体性よりも仕事への従属性を重視した組織運営によって成果を出してきました。今も大方そうではないでしょうか。
 
 これまでの経済活動は同一志向で大量生産で物を作りサービスを提供するという比較的わかりやすいものでした。しかし、モノが行き渡り豊かになった上、グローバル化が進み多くの人が情報を高度に扱うようになり、経済活動が以前よりも複雑になりました。売る・買うの経済活動が単純な「モチベーション2.0」で成り立たなくなってきています。また、過去の成功体験への執着から離脱もできないでいる状況なのだと思います。
 
 複雑化した経済活動の中で、創造性やイノベーションを打ち出し行くためには、一人ひとりが自律的であり、より高度なスキルを持っていることがが求められています。つまり「モチベーション3.0」による行動原理によって何かを成す人たちが求められているのです。Googleのような先進的な企業がすでに「モチベーション3.0」によってサービスを生み出している様がこの本の中でも紹介されています。
 
 
■モチベーション3.0とは
 では、モチベーション3.0とはどのような動機なのか。内発的動機による行動の強さを「自律性」「熟達性」「意義・目的性」というの3視点からダニエル・ピンクは説明しています。かなり荒っぽく端的に紹介します。「自律性」とは自己決定できるということ。だからといって独りよがりということではありません。「熟達性」はエンゲージメントが強いということです。より成長したい、貢献したいという思いです。「意義・目的性」は人生の意義・目的から成すべきことを見れることです。充実感・幸福度を最適化することです。
 
 驚きなのはさまざまな科学的な実験では「モチベーション2.0」よりも「モチベーション3.0」で行動した方が成果が出ているとうことです。それが長期的視点になればなるほど効果があるようです。ただ学問の世界と経営の世界ではかなりのギャップがあるようです。
 

厄介なのは、動機づけについて、多くの企業が新しい知識に追いついていないという点だ。今なお、きわめて多くの組織−企業だけではなく、政府機関や非営利組織も同様に−が、人間の可能性や個人の成果について、時代遅れで検証されていない、科学というよりほとんど俗信に根ざした仮定に基づき運営されている。目先の報奨プランや成果主義に基づく給与体系は機能せず、有害な場合さえ多いという証拠が増えているにもかかわらず、そうした組織では、この慣行を続けている。

 
  
■「モチベーション2.0」から「モチベーション3.0」へ
 新しい行動原理である「モチベーション3.0」によって教育手法や会社組織は改変せざるを得ない時代に入ったのではないかと思います。その試みは教育でも会社でもすでにはじまっています。この本の第3部では「モチベーション3.0」をベースとした学校が5つ紹介されています。大きな潮流となるはこれからで、この本は源流を潮流へと誘う本になるかもしれません。
  
 人間の行動原理が変る。それによって必要とするものが変る。商品やサービスも変る。それによってビジネスモデルが変る。経済そのものが変るかもしれません。長期視点でみたとき、今はちょうどその境目なのかもしれません。20世紀が終わり21世紀に入って10年。やっと21世紀文明に相応しい行動原理が見えてきました。21世紀の新しい行動原理である「モチベーション3.0」について書かれている『モチベーション3.0』が多くの教育関係者、経営者、政治・行政関係者に読んでいただきたい本だと強く思います。