25年以上前のことだが、ボクは一人暮らしをはじめた。大学1年次は寮に入ったので、実質一人暮らしではなかった。楽しかったが、プライベートが全くない集団生活であった。
■寮を出て
寮を出たあと、先輩が住んでいるアパートに2,3か月ほど住まわせてもらった。家賃と水道光熱費を折半するという条件で。完全な一人暮らしではなかったが、部屋が2部屋あったのと、寮で慣れていたので、とくに問題はないと思っていた。
そのアパートでの生活もなれて1週間ほどしたころだっただろうか。玄関のドアが激しくノックされる音が聞こえてきた。先輩はバイトか何かで不在だ。
ドンドンドン!!!
「◎◎くん!!いるんだよね!」
もう、これはとりあえず、出るしかないと思って、玄関ドアに向かった。
■大家さんと初対面
ドアを開けると、そこには、推定年齢70代後半~80年代前半ぐらいのおばあちゃんが立っていた。なぜか、色の薄いサングラス?をかけていて、髪がぼさぼさした感じの白髪。
その見た目はボク的にかなりインパクトがあった。声も少しだみ声で口は早く、声は大きくはきはきと。コントかマンガとかに出てきそうなほど強烈な個性の持ち主だった。
そこのアパートの大家さんだった。
「あら!◎◎くんじゃないね。あんた誰?」
「いま、一緒に住んでいる後輩です」
「ここは定員1名用だから、勝手は困るよ」
そして出身地や大学での専攻やバイトは何をしているのか等の質問を矢継ぎ早にしてくるのです。そして、尋問されたのち、そのまま住み続けることを許可して頂いたのです。
先輩がバイトから戻ってきて、大家さんのことを話したら、その大家さんのことを少しばかり教えてもらいました。
■大家さんは時々やってきて住人の様子をみにくる
大家さんはアパートがあるところとは別の都市に住まわれていて、月に何度かアパートの様子をみにきたりするのです。そのとき大家さんはそのアパートとは別の建物に寝泊まりされているようでした。
先輩が言うには、「おせっかい焼きのいい大家さんだよ」と。
■学生にごちそうを振る舞う大家さん
実際、大家さんが来訪中、夕食時のときとか、そのときアパートにいる学生たちに声をかけて、大家さんの「部屋」で夕食をみんなで御馳走になったり。
残念ながら、ボクは行くタイミングを逃してばかりで、食事にはなかなかありつけませんでした。
■1部屋空いた!
そのアパートは2階建6室、(おそらく)築40年以上のアパートでした。お風呂あり、トイレは和式。エアコンはついてなかったけど、変わった間取りで4畳、3畳の2部屋ありました。
先輩と一緒に住んで2、3か月。ちょうど1階の角部屋が空いたという話をきいたので、大家さんに話して、その部屋を貸してもらえるように頼みました。
■やっと初の一人暮らし
すぐに承諾を得て、先輩のところを出て本格的に一人暮らしをするようになったのです。
不動産屋を通さなかったためか、部屋のリフォームなどはなく、ただ掃除されただけでした。
お風呂場を見ると、広さは全体で1畳もなく、ほぼ正方形の浴槽があるのですが、前の方の使い方が酷かったようで、中が妙に汚くて洗ってもキレイになりません。だから、浴槽にお湯をためることはほとんどなく、シャワー専用で使うはめになりました。
そででも完全なる一人暮らしは解放的で楽しかったですね。
引っ越しといっても、荷物がもともとほとんどなかったし、しかも先輩の部屋の隣の隣。モノと運ぶコストはほとんどかかりません。
■大家さんからの独特すぎる差し入れ
大家さんは普段はいないのですが、とつぜん、アパートにやってきて、1週間ほど滞在されるのです。
ボクは1階の角部屋に住んでいて、すぐ外へ出れるバルコニーがありました。バルコニーの外側のすぐそばに洗濯機を置ける場所があって、そこに洗濯機を置いていました。
ある日の朝。
バルコニーの窓を「ガンガン」叩く音がするのです。
「いるんでしょ!コーヒー置いとくからね!」
ボクがいるかどうかも確認せず、いきなり洗濯機の上にコーヒーを置いて行かれたのです。
朝から面食らいましたね。
■大家さんは学校の先生をしていた
せっかく淹れて頂いたのでコーヒーは頂きました。その後、お礼を言いに大家さんのところへ行って、少しばかり話をしました。
大家さんは、むかし学校で「書道」の教員をされていたそうです。なるほど、学生たちの面倒見がいいわけだ。
定年後は、世界中を旅されたそうです。世界中を旅行されたことをのときのことを冊子にまとめられていてちょっとした本っぽくなっていたのです。
こののち、おばあちゃん大家さんとボクはますます関わりをもっていくようになります・・。