今から二十数年前、あのアパートに住んで3年目の夏から秋にさしかかる頃だった。
学校からアパートに昼過ぎぐらいに帰ってきた。そして、部屋の鍵を開けて入ると、なんとなく違和感をおぼえた。
紅茶葉が入っている缶の周りに、紅茶の葉がこぼれて出ているのだ。そもそも朝、紅茶を飲んでいないから、紅茶葉が缶から出てこぼれていることに、記憶の整合性が一致しないのだ。
違和感はそれだけではない。ノートパソコンの位置が、朝、置いていた場所から異なったところにある。。。
まさか、誰かに入られたか???
ドアの鍵は締まっていたし、ベランダ窓もしっかりしまっている。
ただ、一か所だけ開けているところがあった。
それは、お風呂場の窓だ。
大家さんから、
「シャワーを使ったり、お風呂を入った後は、換気扇がついていないから、必ず窓を開けて換気するように」
と言われていた。
だから、日常的にお風呂場の窓は少しだけ開けた状態にしていた。その窓は玄関通路側にあるにも関わらず、鉄格子のようなものは一切ついていない。
ただ、窓そのものは小さいので、そこから入るという発想はないが、頑張れば出入り可能な窓の大きさだった。
家を空けるときには、そこの窓を閉めていくようにしていたのだが、、、、
あるとき、朝、起きたら、猫がボクの目の前で寝ていた。
どっから入ってきたのか? もちろん、少し開けていたお風呂場の窓からだ。
その猫は勝ってに入ってきて、しらないうちに出ていってしまう。猫を飼う気はなかったので、エサなども一切与えたりもしなかったが、追い出しもしなかった。その猫はそこから適当に入ってきては、出ていったりしていた。
猫の好き勝手にさせておいたので、猫がいつ出ていくかもわからないので、お風呂場の窓を猫が出れる程度、開けておくようになったのだ。
そんなことがあったので、最初は猫が入ってきていたずらでもしたのか???とも思った。
しかし、まさか猫がパソコンを移動できるはずもないし、紅茶の缶を簡単に開けれるはずもない。
これはもしかして、、、、、
それで、アパートの外側を確認しようと思っていて、部屋の外に出たら、隣の別のアパートの住人の「おっさん」が、うちのアパートの周りを何かを探すようにウロウロしている。
ちょうどおっさんと目があって、
「やられた!なんか家に入られたみたいだ。現金やられたわ」
「あ、ボクのところもやられたかも知れません。ただ、現金は置いてないし、金目の物もほとんどないので、何も取られてないようです」
「うちは10万円もってかれたよ」
「これ、警察呼んだ方がいいですよね」
そういったら、おっさんは
「いいよ、もう。警察呼んだら、なんかめんどくさそう」
と言った。ボクもこれといって取られたものはなかったので、通報はしなかった。
そして、遅めの昼飯を食べてひと眠り。
夕方頃、アパートの周りがざわざわするのが聞こえて目が覚めた。
外へ出てみると、警察が何人も来ていて、あの隣のアパートのおっさんが何やら話しているのだ。
あれ? 結局、警察呼んでんじゃん!!
ボクもすぐに近くいた警察官に「泥棒のことですか?うちにも入られたようなんです」と話した。
そして、その警察官に「ボクが警察に通報しようとおっさんに言ったら、面倒だから通報しなくていいって言っていたのに、結局通報したんですね」と言ったら、「後から、10万円取られたことがむしゃくしゃしてきて、やっぱり通報する気になったみたいだよ」と説明を受けた。
しばらくしたら、鑑識(っぽい)人がやってきて、部屋の中には入いり、部屋を閉め切って暗くして、床に対して水平にしてデカイ懐中電灯みたいなものを照らした。
そうすると、
板張りの床に、足跡がくっきりと浮かんで見えた!
あまりにもはっきり見えて、そのときはじめて、見知らぬ誰かが勝手に家に侵入したんだと自覚した。
そして、夜になって、戸締りをしっかり確認して、寝ようとしたとき、本棚のところにおいてあった、未使用のハガキ・切手の袋がないことに気づいた。
あ、取られていたんだ・・・・
もしかしたら、あのおっさんも怪しいかな???
でもわざわざ自分から警察に通報するはずもないか・・・・
とりあえず、大家さんに報告したら、「戸締りぐらいちゃんとしなさい!!」と叱られてしまいました。
その後、警察からは何の連絡も一切なく、あの空き巣事件はどうなってしまったのやら。今も謎のまま。
空き巣は年々減っているようですが、危険な犯罪であることに変わりはありません。 みなさまも、一切の油断を排し、戸締りは厳重に!