前回 「第6章 近未来の老化の治療法」からの続きとなります。
今回は、
第7章 医療におけるイノベーション
からです。
この章では、医療全般が今後どのようになっていくのかがテーマです。全体として底流にあるサブテーマは
個人に特化した精密医療へ
となります。
具体的には、大きくわけると6つほど挙げられています。
1.オーダーメードのがん治療法
2.自分の遺伝子を活用する
3.センサーの活用(パーソナルバイオセンサーの時代)
4.バイオトラッキンング
5.新しいワクチンの開発
6.異種移植と臓器印刷
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それでは一つひとつみていきましょう。
1.オーダーメードのがん治療法
自分たちが相手にしているがんの種類がより明確になれば、新しい手法をもっと上手に利用して対処できるようになる。
1人の患者の特定のがんだけのためにオーダーメイドの治療法を開発し、がんが増殖や転移を起こす前に死滅させるのも夢ではない。
昔と比べてがんの治療法が増え、さらに個人にカスタマイズされていくことで、より精度の高い治療法が開発されていくのでしょうね。
2.自分の遺伝子を活用する
「自分の遺伝子を知る」ことで、のちにどんな病気にかかりやすいかが明らかになり、長生きするためにどんな予防策を講じればいいかもわかる。
どんなものを食べればいいのかとか、腸内微生物は何を維持すればいいのかとかまで、DNAでわかるようになってきているようです。
遺伝子が異なれば薬への反応も異なる。
(ゲノム解析は)いずれは患者のエピゲノム的年齢も割り出し、薬への反応の仕方を予想する材料として使われるようになるだろう。この新しい分野は「エピゲノム創薬」と呼ばれる。
これはどこかの製薬会社のCMでもみたことがあります。患者一人ひとりにあわせた薬をつくるという内容でした。これが実現すると、副作用もかなり無害化できそうですね。
ゲノムの情報をもとに病状の先回りをする。ゲノムの情報が医師の判断を助ける時代が来たら、何より重要なことがある。病気になるまで待たなくても、そもそもその病気にかからないようにするための最善の処置がわかるようになる。
これは、DNAからあらかじめ病気になること予期して、それを事前に処置しするという、究極の予防医学ですね。
3.センサーの活用(パーソナルバイオセンサーの時代)
バイタルサイン(呼吸、脈拍、体温など)をセンサー付きウォッチやリングを使って、体内の主要な化学物質がどう変動するかをモニターすることで、生活習慣病や体つくりについてよい決断を下せるようになるということです。
ちなみに、デビッド・シンクレア先生がチェックしているバイオマーカーは以下の通りでした。
検査項目:ビタミンD、ビタミンB12、ヘモグロビン、亜鉛、血糖値、テストステロン値、炎症マーカー、肝機能、筋肉の健康状態を示すマーカー、コレステロール、中性脂肪など。検査は数ヵ月に1回。
4.バイオトラッキンング
ここは、「3.センサーの活用」の続きで、バイオマーカーでとらえたデータを活かすことでできることが挙げられています。
バイオトラッキングは、急性の重大な病による死を防ぐ役にも立つはずだ。
バイオトラッキングからわかるのは、たんに心拍数が上がったとか、ビタミン濃度が下がったとか、コルチゾール値が上昇したといったことだけではない。私たちの体が攻撃を受けているときもしれを教えてくれる。
(バイオトラッキングが)集団レベルで効果を発揮させれば、パンデミックの先手を打つことができるのだ。
大量の「バイオクラウド」データと、超高速のDNA解析を組み合わせれば、病原体が主要輸送ルートを通って都市から都市へと広がっていくのを検知できる。
集団レベルまでいけば、今回の新型コロナの事前対策にも役立てかもしれないですね。
5.新しいワクチンの開発
集団に対して予防接種をする場合、たんに私たちの一人一人が病気にかからなくなるというだけではない。集団のなかで最も弱い者たち、つまり子どもと高齢者がその病気から守られる。
老化とは直接の関係がなくても、毎年何百万人もの命を奪う疾患は存在する。そうした病気の発見・診断・治療、さらには予防までもが短期間でできるようになれば、私たちは今後も平均寿命を上へ上へと押し上げていけるだろう。
毎年、インフルエンザのワクチンは接種していますが、おかげで10数年以上インフルエンザにはかかっておりません。ボクにはかなり効果があるようです。同じように、新型コロナのワクチンにも期待したいところです。
6.異種移植と臓器印刷
損傷や病気で機能を失った臓器を新しいものと交換するには、今のところ方法は一つしかない。臓器移植だ。
いまでは、交通事故などのによる死者からの臓器提供を待つことになりますが、ここではあたらあしい手段として二つあげられています。
<異種移植>
哺乳類細胞の遺伝子を編集し、それをブタの体内で、ヒトの遺伝子編集を行う。それによってヒトの臓器を持つブタを育てこと。
これは、なにやら、倫理的というか、生理的な嫌悪感と闘う必要がありそうです。
<臓器印刷>
生きた細胞の3次元の層にして出力できるインクジェットプリンターの開発。
将来的には、私たちが体の一部を必要としたとき、自分自身の幹細胞を使って印刷するようになる可能性が高い。
臓器印刷は、かなりよさそうですね。これはぜひ実現してほしいです。そうすれば、臓器提供を待っている人たちにとっても光明となるのではないでしょうか。
この第7章で、
第2部「私たちは何を学びつつあるのか(現在)」
は終わりです。
次回からは
第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
となります。
第3部の第8章、
未来の世界はこうなる
からです。