前回 第1章からの続きとなります。
今回は、
第2章:弾き方を忘れたピアニスト
から、かいつまんでまとめていきます。
エピゲノムの変化が老化の原因だ!
と、デビッド・シンクレア先生は言われています。
なので、このエピゲノムの仕組みってどのような仕組みなのかを見ていきましょう。
■遺伝子のスイッチを調整するエピゲノムのメカニズム
私たちの体をつくる細胞には、すべて同一のDNAがしまわれている。だとしたら、神経細胞と皮膚細胞の違いを生んでいるものは何なのか。その答えがエピゲノムだ。どの遺伝子のスイッチを入れ、どの遺伝子をオフのままにしておくのかを、調節するための仕組みと構造の総称がエピゲノムである。私たちの生命活動を実際にコントロールしている割合で行けば、ゲノムよりエピゲノムのほうが圧倒的に大きい。
老化の情報理論を理解するには、もう一度エピゲノムに立ち戻る必要がある。それこそが、サーチュインが調節に一役買っている領域だからだ。
ゲノムとエピゲノムの関係をわかりやすく、ピアノ(ゲノム)とピアニスト(エピゲノム)を例にして説明されています。
ゲノムをグランドピアノと考え、1つ1つの遺伝子が鍵盤に相当し、鍵盤を1個叩けば音が一つ生まれる。メーカーや素材、あるいは製造環境の異なるピアノがあれば、たとえ同じように弾いても微妙に違う音色が響く。ピアノというゲノムには、およそ2万個の鍵盤、つまり遺伝子がある。
ピアノがゲノムだとするのなら、それを弾きこなすピアニストがゲノムだ。DNAの巻きつきを緩めたり強めたりし、メチル基やアセチル基といった化学物質の標識を遺伝子に着けたり外したりしながら、エピゲノムは私たちのゲノムを使って生命の音楽を奏でている。
そして、ピアニストがミスタッチをしてしまい、最初は気にならない程度から次第に雑音が入っているような弾き方になってしまいます。
エピゲノム的な雑音も同じような混乱状態を生む。雑音が生じるのは、DNAの損傷などのように細胞が大きく傷つけられたときが主だ。
「老化の情報理論」によれば、これこそが老化の原因である。
老化することの根本的な上流の原因は、ゲノムに不安定さが積み重なることにあると見てよさそうだ。
デビッド・シンクレア先生が述べている、この「老化の情報理論」の流れをみておきます。
若さ
↓
DNAの損傷
↓
ゲノムの不安定化
↓
DNAの巻きつきと遺伝子調節(つまりエピゲノム)の混乱
↓
細胞のアイデンティティの喪失
↓
細胞の老化
↓
病気
↓
死
なるほど!こうやって老いていくわけですね。結果には原因があるわけです。
これのどれか一つにでも人の手で働きかけることができれば、人間がもっと長生きするのを助けられるかもしれないのである。
この流れがわかれば、どこかで介入して老化を阻止できるということですよね。
デビッド・シンクレア先生は、DNAを修復する仕組みがもともと体内に備わっていて、それを
サバイバル回路
と呼んでいます。
DNAの損傷を感知し、細胞の増殖を遅らせ、DNAの損傷が治るまではその修復にエネルギーを振り向ける仕組みである。
自分の体内にはもともと素晴らしい仕組みがそわなっているのですね!
では、どれくらいDNAは損傷するのでしょうか?
私たちのDNAは絶えず攻撃にさらされている。平均すると、細胞が自らのDNAを複製するたびに、46本ある染色体のそれぞれが何らかのかたちで損傷する。このほか、自然放射線や環境中の化学物質、レントゲンやCTスキャンなどによってもDNAはダメージを受ける。
大なり、小なりあるようですが、かなりの頻度で損傷しているようです。この損傷を修復する上で重要となってくるのが、
サーチュイン
です。
本書によると、DNAが損傷したとき、その修復を助けるためにサーチュインが稼働します。言い方を変えれば、サーチュインが適切に稼働していれば損傷したDNAは修復され正常に戻り、細胞は老化に至らずに済むということになります。
■サーチュインは「災害対応部隊の指揮官」
この部隊の仕事は多岐にわたる。DNAの安定化、DNAの修復、細胞の生存、代謝、細胞間の情報伝達など様々な問題に対して、それぞれに特化した緊急支援チームを派遣するのだ。
災害が起きたとき、サーチュインは普段の優先事項(エピゲノムを調節する仕事)を後回しにしてDNAの修復に駆け付け、修復が終わって持ち場に帰ったら、いつもの仕事(遺伝子の制御を通して、細胞がアイデンティティを失わないように、最適な状態で機能できるようにすること)に戻る。
これが通常の災害時のサーチュインの働きです。しかし、このサーチュインが緊急事態で酷使されると、
結果として細胞はアイデンティティを失って正しく機能しなくなり、混乱状態に陥る。その混乱状態を具体化したものが老化だ。これこそがエピゲノムの雑音であり、私たちの統合理論の中核をなすものである。
だから、そうならないようにすることが重要なのですね。酷使ではななく適切に使う。
エピゲノムのサバイバル回路を適度に働かせて、より長く、より健康な人生を送ることは十分に可能だ。
ここで第2章のまとめは終わりですが、ボク自身も正しく理解できていないところがあるかもしれないので、随時記事は修正していきます。ご容赦ください。